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日本代表レポート:第17回6/29(金)

玉砕という楽な道は選択せず 西野監督の苦渋の決断は圧倒的に“正しかった”

玉砕という楽な道は選択せず 西野監督の苦渋の決断は圧倒的に“正しかった”

苦渋の決断だった。

82分、西野朗監督はFW武藤嘉紀に代えてMF長谷部誠を投入し、フォーメーションを4-4-2から4-1-4-1に変更した。その時の試合状況は0-1でポーランドのリード。通常であれば同点、逆転を狙うためのカードを切る場面だが、この交代とシステム変更は意味するものは“負けてもいいからこれ以上失点はするな”という消極的なメッセージだった。

この時、他会場で同時刻にキックオフしたコロンビアとセネガルの試合では、コロンビアが1-0でリードしていた。このままスコアが動かなければ、1位はコロンビア、2位はフェアプレーポイントの差で日本という状況だった。だが、もし日本が2失点目を喫すれば、2位はセネガルになる。そんな綱渡りの状況での長谷部の投入。選手たちもこの交代の意図を理解していた。

玉砕という楽な道は選択せず 西野監督の苦渋の決断は圧倒的に“正しかった”

日本はボールを持っても前に運ぼうとはせず、DFラインで横パスを細かくつなぐばかり。攻めようという意思はまったく感じられない。一方のポーランドもまったくボールを取りにいこうとしない。すでに2連敗で1次リーグ敗退が決まっていた彼らにとっては最後に1勝を挙げるという最低限の結果を残せればよかったので、日本に“忖度”したのだ。スタンドでこの試合を観戦している人々もピッチ上で何が起きているかすぐに理解し、スタジアムは強烈なブーイングが鳴り続けるという異様な光景となった。

どんなに不格好でも目標を達成する。西野監督は信念を曲げてでも実を取りに行った。「自分のスタイルは攻撃的というか、強気」と語る男が、もうこれ以上失点だけはしたくないという後ろ向きの選択をしたのだ。

「非常に厳しい選択。万一という状況は、このピッチ上でも考えられましたし、もちろん他会場でも万一はあり得た。それで選択したのは、そのままの状態をキープすること。このピッチで万一が起こらない状況、これは間違いなく他力の選択だったということで、ゲーム自体で負けている状況をキープしている自分というのも納得いかない。不本意な選択をしている。他力に頼っている」

玉砕という楽な道は選択せず 西野監督の苦渋の決断は圧倒的に“正しかった”

ただ、いかにも消極的な采配ではあったが、その選択は相当の覚悟がなければ実行できるものではない。もし、その状況で日本がさらに失点する、あるいはコロンビアがセネガルに追いつかれでもしたら、今回の采配は日本のワールドカップ史に汚点として残るのだ。そして、西野監督には“弱虫”という失格の烙印が一生ついてまわることにもなる。玉砕覚悟で攻撃のカードを切った方が、ある意味では楽だった。その大きなリスクを承知の上で、指揮官は日本が最も生き残る可能性が高い道はこれだと賭けに出たのだ。

今回の選択は、自分たちが同点に追いつく確率よりもコロンビアが失点しない確率の方が高いと考えたということでもある。それは“己よりもコロンビアの実力を信じた”とも言える。「マイアミの奇跡」と言われたアトランタ五輪での采配がそうであったように、自身の力と置かれた状況を冷静に判断する、西野監督のリアリストとしての顔が出たのだ。

実際、その時間帯までの日本に、ビハインドを跳ね返せる雰囲気はなかった。ポーランドのモチベーションは明らかに低く、プレーはインテンシティを欠いていた。ボールを持ってもゴールに向かって飛び出していくような迫力はなく、ボールロストしても帰陣は遅い。試合後、吉田麻也は敵エースのロベルト・レバンドフスキについて「完全にやる気なかった。後半のカウンターとかでは瞬時にパワー、エネルギーを使ってきましたけど、全体を通じてはほとんど情熱的なものを感じなかった」と振り返っていたが、それはポーランド選手の大半にも同じことが言えた。

玉砕という楽な道は選択せず 西野監督の苦渋の決断は圧倒的に“正しかった”

しかし、日本はそのポーランドに対して有効な手を打てていなかったのだ。むしろ、後半は下手に攻めるとカウンターからピンチを招くというシーンが増えていた。その状況を見て、西野監督は外したら不名誉なレッテルが一生ついてまわるような博打に出て、それに勝ったのだ。

西野監督はポーランド戦で1、2試合目から先発6人を入れ替えて臨むという試合前から大きな賭けに出ていた。決勝トーナメントでの戦いを見据え、疲労が溜まっている主力の一部を休ませたのだ。

「西野さん、持ってるなと思いました。相当、相当、勝負師だなと思いますね」

そう感嘆の声を挙げたのは、休養を与えられた一人である原口元気だ。西野監督は思い切った手を打ち続け、試合には負けたが勝負には勝った。キャプテンの長谷部誠が「この世界は結果論。真実は結果の中にしかない」と話したように、勝負の世界は結果がすべて。その意味で、西野監督の選択は圧倒的に“正しかった”のだ。

text by 神谷正明

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STANDINGS順位表

グループ A

順位 チーム 勝点 得失点
1 オランダ国旗オランダ 7 2 1 0 +4
2 セネガル国旗セネガル 6 2 0 1 +1
3 エクアドル国旗エクアドル 4 1 1 1 +1
4 カタール国旗カタール 0 0 0 3 -6

グループA 日程・結果

グループ B

順位 チーム 勝点 得失点
1 イングランド国旗イングランド 7 2 1 0 +7
2 アメリカ国旗アメリカ 5 1 2 0 +1
3 イラン国旗イラン 3 1 0 2 -3
4 ウェールズ国旗ウェールズ 1 0 1 2 -5

グループB 日程・結果

グループ C

順位 チーム 勝点 得失点
1 アルゼンチン国旗アルゼンチン 6 2 0 1 +3
2 ポーランド国旗ポーランド 4 1 1 1 0
3 メキシコ国旗メキシコ 4 1 1 1 -1
4 サウジアラビア国旗サウジアラビア 3 1 0 2 -2

グループC 日程・結果

グループ D

順位 チーム 勝点 得失点
1 フランス国旗フランス 6 2 0 1 +3
2 オーストラリア国旗オーストラリア 6 2 0 1 -1
3 チュニジア国旗チュニジア 4 1 1 1 0
4 デンマーク国旗デンマーク 1 0 1 2 -2

グループD 日程・結果

グループ E

順位 チーム 勝点 得失点
1 日本国旗日本 6 2 0 1 +1
2 スペイン国旗スペイン 4 1 1 1 +6
3 ドイツ国旗ドイツ 4 1 1 1 +1
4 コスタリカ国旗コスタリカ 3 1 0 2 -8

グループE 日程・結果

グループ F

順位 チーム 勝点 得失点
1 モロッコ国旗モロッコ 7 2 1 0 +3
2 クロアチア国旗クロアチア 5 1 2 0 +3
3 ベルギー国旗ベルギー 4 1 1 1 -1
4 カナダ国旗カナダ 0 0 0 3 -5

グループF 日程・結果

グループ G

順位 チーム 勝点 得失点
1 ブラジル国旗ブラジル 6 2 0 1 +2
2 スイス国旗スイス 6 2 0 1 +1
3 カメルーン国旗カメルーン 4 1 1 1 0
4 セルビア国旗セルビア 1 0 1 2 -3

グループG 日程・結果

グループ H

順位 チーム 勝点 得失点
1 ポルトガル国旗ポルトガル 6 2 0 1 +2
2 韓国国旗韓国 4 1 1 1 0
3 ウルグアイ国旗ウルグアイ 4 1 1 1 0
4 ガーナ国旗ガーナ 3 1 0 2 -2

グループH 日程・結果

RANKING得点ランキング

順位   選手   得点
1 キリアン エムバペ キリアン エムバペ フランス国旗 8
2 リオネル メッシ リオネル メッシ アルゼンチン国旗 7
3 オリヴィエ ジルー オリヴィエ ジルー フランス国旗 4
3 フリアン アルバレス フリアン アルバレス アルゼンチン国旗 4
5 コーディ ガクポ コーディ ガクポ オランダ国旗 3
5 ブカヨ サカ ブカヨ サカ イングランド国旗 3
5 リシャルリソン リシャルリソン ブラジル国旗 3
5 ゴンサロ ラモス ゴンサロ ラモス ポルトガル国旗 3
5 アルバロ モラタ アルバロ モラタ スペイン国旗 3
5 マーカス ラッシュフォード マーカス ラッシュフォード イングランド国旗 3
5 エネル バレンシア エネル バレンシア エクアドル国旗 3

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