REPORT 日本代表レポート
日本代表レポート:第19回7/3(火)
香川真司、快進撃演出も10番としての自身に満足できず…それでも全てを捧げた4年間は嘘をつかなかった
悔しさは滲ませていた。しかし、それでも表情に曇りはなく、どこか晴れやかですらあった。
7月2日、ロストフ。日本代表はワールドカップ決勝トーナメント1回戦でベルギー代表に2-3で逆転負けを喫した。失意の敗戦後、ロストフ・アレナのロッカールームから姿を現した香川真司は「自分たちは全てを尽くして戦い抜いた、それがこの結果なので、受け入れていくしかないのかなと思います」と現実としっかり向き合っていた。
日本史上初となるワールドカップベスト8にあと一歩のところまで近づいていた。1次リーグ第1戦のコロンビア戦、第2戦のセネガル戦と同じ顔ぶれ、つまり今大会のベストメンバーで臨んだ日本は世界トップクラスの選手がひしめく相手に対しても多くの時間で粘り強く戦えていた。
トップ下でスタメン出場した香川も、守備ではベルギーのビルドアップを阻むために前から縦パスのルートを消し続け、攻撃時には持ち味である相手ゾーン間でのパスレシーブや、柴崎岳との連動したパス交換、乾貴士とのコンビネーションなどで攻撃のリズムを作った。前半開始早々には高い位置でボールを奪ってゴールを脅かし、同31分には左サイドで起点を作って長友佑都のクロスから乾貴士がヘッドで決定的なシュートを放つ場面をお膳立てした。
そして、日本が48分にカウンターから原口元気が値千金の先制弾をマークすると、その4分後だった。乾が左サイドからゴール前にクロスを入れた時、香川はペナルティエリア付近に顔を出していた。そして乾のクロスがクリアされると、香川はセカンドボールを拾い、最初は自身で局面打開を図るが、難しいと見ると乾にボールを戻し、それがアシストとなった。
初戦のコロンビア戦では開始直後に中盤に落ちてきたクリアボールを瞬時の判断で相手DFラインの裏に送り込み、飛び出した大迫勇也のシュートのこぼれ球から香川が2次攻撃のシュートを放ったことがPKと相手の退場を呼び込み、白星スタートにつながった。
続く第2戦のセネガル戦ではバイタルエリアで何度もパスを引き出し、相手を困らせた。また、人に強く当たりにくるセネガル守備陣の性質を逆手に取り、マーカーを引きつけることで味方に有効なスペースを提供するクレバーなプレーでボールに触らずとも攻撃の潤滑油として機能してみせた。
しかし、ゴールという勝利に大きく直結する決定的な仕事ができたのは、コロンビア戦のPKによる1点のみ。「やっぱり10番というのは最終的に得点をするか、アシストするかだと思うので、いくらいいプレーをしたとしても、結局はそこで判断されると思う。そういう意味では1得点は物足りないと思う」とエース番号を託された者として、自身の結果に満足することはできなかった。
ただ、この大舞台に立つために取り組んできたこと、その過程には後悔はない。4年前のブラジル大会で消化不良のパフォーマンスで涙を飲んだあと、次のワールドカップこそはと全てを注いで準備をしてきた。その時間に嘘はなかった。
「自分自身がやってきたことに対する誇りだったり、道は間違っていなかったなとすごく感じますけど、ただやはり勝ちきりたかった。勝ちきるチャンスはあったと思うので、それは非常に悔しい。ただ自分がやってきたものに対する後悔であったり、やってきたことに対するものに疑いはなかったなと、自分を信じてやれたなとそれはすごく感じています」
4年という長い年月をかけて目標してきた舞台が突然終わりを迎えた。すぐに気持ちを切り替えることなど到底無理だ。「次は分からないですね。正直、今は何とも言えない。ここで成功することを望み、そのために日々やってきたし、だから今の状況では考えられない」。次の4年後をまた目指すと簡単に言えるはずもない。今はただ、心と体を休めればいい。
text by 神谷正明
STANDINGS順位表
RANKING得点ランキング
順位 | 選手 | 得点 | ||
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1 | キリアン エムバペ | 8 | ||
2 | リオネル メッシ | 7 | ||
3 | オリヴィエ ジルー | 4 | ||
3 | フリアン アルバレス | 4 | ||
5 | コーディ ガクポ | 3 | ||
5 | ブカヨ サカ | 3 | ||
5 | リシャルリソン | 3 | ||
5 | ゴンサロ ラモス | 3 | ||
5 | アルバロ モラタ | 3 | ||
5 | マーカス ラッシュフォード | 3 | ||
5 | エネル バレンシア | 3 |