見どころ・戦評
[J1第30節]川崎2-1湘南/9月26日/等々力
【チーム採点・寸評】
川崎 6
韓国で行なわれたACLからの連戦で、新型コロナウイルスの影響による“バブル生活”が続くなか、選手のコンディションや配置を考慮し、従来の4-3-3ではなく、4-4-2(2トップは縦関係が多く、見方によっては4-2-3-1)でスタート。しかし、15分に失点するなど前半の出来は苦しいもの。ハーフタイムで3人を代え、4-3-3に戻した後半は前への圧力が増したが、ピンチもあった。それでも旗手のゴールで同点に追いつき、後半アディショナルタイムの知念の劇的な決勝弾で勝ち切った勝負強さはさすが。4日前のアウェーの鹿島戦に続くドラマチックな逆転劇、そしてリーグ戦では約4か月ぶりとなった等々力でのゲームでしっかり勝てた点はチームにとって大きいはず。
「周囲が想像するより厳しい」と鬼木監督が語っていた選手たちの疲労度を考えれば、「よくやった!!」と称賛したくなる勝利でもある。ただ、内容を考えれば、評価が難しいゲームでもある。トータルで考えれば、「6」というところか。
【川崎|採点・寸評】
GK
1 チョン・ソンリョン 6.5
1失点したとはいえ、16分に1対1を阻んだシーンや36分のセーブなど、好反応でゴールを守った。彼がいなければ流れはさらに湘南に傾いていたはず。裏に通されたボールへのカバーリングも早く、苦しむチームを後方から支えた。
DF
13 山根視来 6
疲れもあっただろう。失点シーンでは大橋にクロスを上げられるなど、前半だけで考えれば評価は「5」。しかし、後半は旗手の貴重な同点弾をアシスト。右ウイングに家長が入ってからはオーバーラップもスムーズになり、より攻撃を活性化した。
28 山村和也 6(74分 OUT)
縦パスを引っかけてしまうシーンもあったが、リズムが上がらないチームにあって、最後の一線で身体を張った。もう少しポゼッションのテンポを上げたかったが、失点後もギリギリで耐えた。
7 車屋紳太郎 6
戦列復帰を果たす。山村同様にチームの動きが乏しかっただけに、得意の持ち出しや縦パスを見せられるシーンは限られ、守備が荒くなる場面も。それでも特に後半はスピードを生かして相手の攻撃を阻み、味方の反撃を待った。
47 旗手怜央 6
この選手もなかなか評価が難しい。左SBで先発した前半はパスをつなげられず、失点シーンも彼のロストから生まれた。それでもインサイドハーフにポジションを変えた後半はチームとして喉から手が出るほど欲しかった同点弾をマーク。攻守に走り回った。「6.5」と迷う……。
MF
5 谷口彰悟 5(HT OUT)
前節、負傷から復帰したキャプテンは、CBではなくボランチで先発。ただ、調子が戻りきっていないのか、パス出しの意識は強く感じられたが、らしくないミスもあって前半のみで交代となった。
8 脇坂泰斗 6
味方に声をかけながらチームをコントロールしようと振舞った。前半はボランチ、後半はインサイドハーフとして相手のプレスをかわすパスを出せる存在で、旗手のゴールも彼のサイドチェンジが起点に。ただ、本来の力を鑑みればもっとできたはず。
MF
19 遠野大弥 5(HT OUT)
右のサイドハーフとしてランニングとパスを混ぜながら攻撃に絡もうと動いた。しかし、なかなか効果的な絡みができずに前半のみでベンチに下がった。
MAN OF THE MATCH
FW
20 知念 慶 7
前半は小林と縦関係を築きながら守備でも貢献。その分、70分あたりから足を攣りかけていたというが、後半アディショナルタイムに自慢のヘッドで意地の決勝弾!! この日のヒーローとなった。調子は上がっており、フィニッシュだけでなく、万能に働けるFWとして進化中。
24 宮城 天 5(HT OUT)
前節、鹿島を沈める劇的な決勝弾を奪った俊英は、この日は周囲との息が合わず。ならばと、自ら切り込んで果敢にシュートを狙ったが、結果を残せなかった。
11 小林 悠 5.5(65分OUT)
知念との縦関係で前線と中盤を動きながら、相手の最終ラインの裏を狙った。9分には決定機を迎えるも相手GKに阻まれた。あれを決めていれば試合の流れも変わったはずだが……。
交代出場
DF
2 登里享平 6(HT IN)
守備を固められた分、攻撃面では相手を崩す大きな一押しはできず。それでもいつものように周囲に的確な声を送り、守備でもセーフティーにプレーした。
MF
22 橘田健人 6(HT IN)
1点を追ってチームが前に出る状況で、アンカーとして幅広いエリアをカバーする仕事は難易度が高かったはず。それでも、ここ数試合で高く評価される球際、運動量、セカンドボールへの反応をこの試合でも見せ、潤滑油として奮闘した。
FW
23 マルシーニョ 5.5(HT IN)
ドリブラーとしてボールを持った時の“空気感”はある。しかし、周囲とのコンビネーションや守備時の立ち位置などは改善の余地がありそうだ。
FW
41 家長昭博 6.5(65分 IN)
試合後に指揮官が「時間を作ってくれますし、やはりゲームを読める選手」と語ったように、終盤の反撃の切り札となった。後半アディショナルタイムには絶妙なクロスで知念の決勝弾をアシスト。
DF
4 ジェジエウ 6(74分 IN)
山村の足の痙攣の影響で、最後の交代カードとしてピッチへ。快足を飛ばして相手の速攻を防ぎ、終盤にはパワープレー要員として前線へ。
監督
鬼木 達 6
これまた評価が難しいところ。連戦のなかでスタメンを入れ替え、個々の能力を生かす理由などがあった4-4-2(4-2-3-1)の選択は前半を難しいものにしてしまった。一方でハーフタイムでの3枚代え、旗手のインサイドハーフへの移動、勝負どころでの家長の投入、山村のアクシデントがあったとはいえ知念を最後までピッチに立たせた采配は、劇的な逆転勝利へとつながった。後半の舵取りを間違えていれば、勝利はなかっただろう。
※MAN OF THE MATCH=取材記者が選定するこの試合の最優秀選手。
※採点は10点満点で「6」を及第点とし、「0.5」刻みで評価。
※出場時間が15分未満の選手は原則採点なし。
【チーム採点・寸評】
湘南 5.5
個々がよく走り、身体を張り、ボールを奪えば2トップを起点に流動的に攻める。チームとして考えが共有されていることがよく分かり、今季リーグ戦ではいまだ一敗の王者から勝点を奪う一歩手前まで迫った。残留争いの渦中にいるだけに、内容よりも結果が欲しいところだろうが、好感の持てる戦いだったのは事実。求められるのはフィニッシュを含めたプレー精度の向上か。
【湘南|採点・寸評】
GK
1 谷 晃生 5.5
9分には寄せられ、出したフィードを奪われてピンチを迎えるも、持ち前のセービング能力で小林のシュートをブロック。その後も集中してゴールを守ったが……。2失点はともに相手のクロスとシュートを褒めるべきだろうが、悔いは残ったはず。後半アディショナルタイムに危険なパスミスなど、フィードの精度も上げたい。
DF
4 舘 幸希 6
採点が高いとは言われそうだが、試合に勝っていれば、石原とともにより評価したかったパフォーマンス。粗さは残っているものの、相手に食らいつき、縦へのフィードも。
3 石原広教 6
3バックの中央に位置し、川崎の攻撃をよく跳ね返した。1-1のままで終わっていれば、MOMにしようかとも考えていたが、最終盤に知念のマークに付ききれずに、ゴールを許す。その直後の姿を見れば持てる力を出し尽くしたということなのだろう。失点に絡んだだけに「6」は高いとお叱りを受けるだろうが、奮闘は認められるべき。
2 杉岡大暉 6
3バックの左を担いながら、パスカットへ果敢に前に出て、カウンターとなれば逆サイドまでプレーエリアを広げるシーンもあった。精度向上の必要はあるだろうが、気持ちの入ったプレーを示した。
MF
6 岡本拓也 6(74分OUT)
深い位置にポジションを取って右サイドに蓋をしながら、機を見てオーバーラップ。もう少し攻撃面で上積みを果たしたかっただろうが、仕事はしっかりこなした。
14 茨田陽生 6(82分OUT)
インサイドハーフで組んだ平岡や山田とともに、攻撃時にはアクセント役となり、守備時にはサイドと中をケア。先制点のシーンでは相手に激しく寄せるなど、チームのために走った。
32 田中 聡 6.5
ミスもあっただけに評価を悩む。それでも練習でやっていた形という、アンカーながらペナルティエリアのニアサイドに侵入し、先制点をゲット。縦パスも狙い続けた。
MF
28 平岡大陽 6(32分OUT)
茨田とともに足を動かして攻守に絡み、ボールを持てば、スルーパスを通した。先制点の起点にもなっただけに、よりプレーを見たかったが、何かしらのトラブルで前半のうちに交代となった。
26 畑 大雅 5.5
逆サイドの岡本とバランスを取りながらより前へ。試合終盤にもオーバーラップする脚力と走力を見せた。しかし、失点はともに自らのサイドから。山根と家長に決定的なクロスを上げられてしまった点を踏まえれば、「5.5」か。
FW
33 町野修斗 6
パスミスからピンチを招いたシーンがあったのはマイナスも、柔軟にポジションを取って周囲と有機的に連動。前線の起点として機能した。
17 大橋祐紀 6(82分OUT)
機動力を生かして前線を動き回り、チャンスを演出。先制点は彼の突破からで、田中のゴールをアシスト。しかし、すぐ後のGKとの1対1をモノにできず。あそこで2点差にしていたら……。FWとして小さくない後悔が残ったはず。
交代出場
MF
10 山田直輝 6(32分IN)
平岡のアクシデントを受けて前半の途中から出場。決定的な仕事はできずとも、攻撃に変化を加えた。
MF
5 古林将太 5(74分IN)
1-1の状況で、右サイドの活性化へ投入される。ただしクロスをアウトさせてしまったり、クリアを相手に拾われるなど、本領発揮とはいかず。
FW
39 ウェリントン・ジュニオール ―(82分IN)
出場時間が短く、川崎に押されている状況での出番だっただけに、良い形でボールを持てず。カウンターを先導したかったが……。
MF
29 三幸秀稔 ―(82分IN)
力強くプレー。勝点獲得へ中盤の強度を上げたが、残念ながら結果には結びつかなかった。
監督
山口 智 5.5
チームの統制は取れ、ゲームプランもよく表現できていた印象。しかし、勝点を手にするための終盤のもう一押しを見たかったところ。
※MAN OF THE MATCH=取材記者が選定するこの試合の最優秀選手。
※採点は10点満点で「6」を平均とし、「0.5」刻みで評価。
※出場時間が15分未満の選手は原則採点なし。
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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