見どころ・戦評
[J1第31節]川崎1-0FC東京/10月2日/等々力
【チーム採点・寸評】
川崎 6.5
韓国で開催されたACLラウンド16(PK戦の末に蔚山現代に敗戦)からの帰国後、ようやく隔離生活が終わったものの、前節の神戸戦(〇3-1)からは中2日。5連戦の最終戦で、満身創痍の状態であったはずだが、チャンスをしっかり決め切り、後半はよく耐えた。
苦しい内容であったが、この日は勝利を掴んだことに意味があるだろう。選手たちが必死に粘り強く戦う姿は、熱く胸を打つものがあった。人数を増やしてスタジアムに入れたサポーターにとっても誇らしいゲームになったはずだ。鬼木監督が掲げていた“勝負の5連戦”すべてに勝った結果も素晴らしく、リーグ連覇へ力強く歩を進めている。ジェジエウ、登里、L・ダミアン、橘田らMOM候補は多数。
【川崎|採点・寸評】
GK
1 チョン・ソンリョン 6.5
特に後半は攻め込まれる時間が続くも冷静にゴールを守った。87分にD・オリヴェイラに打たれそうになったシーンも身体を張った。
DF
13 山根視来 6
マッチアップしたアダイウトンや長友の対応に手を焼くシーンもあったが、粘り強くディフェンスした。前節は足の状態で途中交代したものの、この日は勝利へ戦い切った。試合後には同じくエネルギーを出し切ったであろう旗手と喜び合った。
4 ジェジエウ 6.5
恐らく疲労もあって本調子でなかったはず。身体も重そうだった。それでも73分にはスピード勝負を演じていた永井のシュートをギリギリのところでクリアするなど最後の一線で気持ちを見せた。試合後には多くの拍手を受ける。
7 車屋紳太郎 6.5
ジェジエウとCBを組み、こちらも球際で戦ってFC東京にゴールを許さず。ジェジエウがパスを奪われてアダイウトンに持ち込まれた22分のシーンもしっかりカバー。54分のマルシーニョへのパスなど真骨頂の絶妙なフィードも見せた。
MAN OF THE MATCH
2 登里享平 6.5(81分 OUT)
自ら反省したように前半はパスがズレるシーンもあるなど、決して満足のいくパフォーマンスではなかっただろうが、45+1分にはマルシーニョとの連係で左サイドを攻め上がり、L・ダミアンのゴールをアシスト。いぶし銀の仕事を果たした。57分の永井の折り返しからD・オリヴェイラに打たれそうになったシーンもよくカバー。後半途中に交代となったが、勝利への強い意欲をチームの先頭に立って示した。ジェジエウらほかに候補者もいるが周囲への影響力も加味してMOMに推したい。
MF
22 橘田健人 6.5
後半になればより運動量とカバーリング能力が光るのは、すでに周知の“武器”。64分にジェジエウがクリア仕切れずに永井にシュートを打たれそうになったところも、よくカバーに入った。大卒ルーキーながら頼れる存在だ。
8 脇坂泰斗 6(63分 OUT)
ソリッドな守備組織を敷いたFC東京に対し、家長らと連係しながら崩せるポイントを探った。狭いエリアでのターンなど見せ場も作るも、決定的な仕事はできず。
MF
47 旗手怜央 6
試合終了とともにピッチに倒れ込み、センターサークルで対戦相手とサポーターへ挨拶をした後もその場で座り込む。それだけパワーを使い切ったということなのだろう。粗さが見えるシーンもあったが、攻守によく走った。
FW
41 家長昭博 6
先制点は彼の左へのサイドチェンジから始まった。前節のヒーローも疲労を抱えていたのだろう、パスやクロスが珍しくズレる場面もあったが、局面では存在感。
23 マルシーニョ 6(63分 OUT)
気合いが空回りしたか、前半早い時間にイエローカードを受ける。前への意識は良いが、前半はなかなか周囲と息が合わず。それでも45+1分にオーバーラップした登里へ的確なパスを通し、決勝弾に絡む。攻撃に幅をもたらす存在だったが、プレー成功率も鑑み、「6.5」と悩む。
9 レアンドロ・ダミアン 6.5(63分 OUT)
J・オマリの激しい守備に遭い、なかなか前線で起点になれず。それでも45+1分に登里のクロスにJ・オマリの前に入ってヘッドでゴール!! ワンチャンスを仕留める決定力はさすがだ。
交代出場
FW
20 知念 慶 6(63分 IN)
チームとして前線に上手くボールを運べず、相手の反撃を受けただけに、シュートは打てなかった。それでも前線からのチェイシングやキープなどで貢献。
DF
5 谷口彰悟 6(63分 IN)
確かにピンチを招くミスはあった。それでも状態は万全ではなかったはずだが、キャプテンとしてゴール前で相手の攻撃を跳ね返した。
FW
11 小林 悠 6(63分 IN)
中盤で相手を数人抜いて攻撃につなげたシーンもあったが、ゲームの流れ的に右サイドで守備に追われる時間が長かった。それでも75分にゴール前でカバーに入りピンチを防いだ直後にはチームメイトを叱咤激励するなど、活を入れられる貴重な存在だった。彼のような選手がいてくれるからこそ、苦しいコンディションでも川崎は勝ち続けられたのだろう。
MF
28 山村和也 -(81分 IN)
D・オリヴェイラにシュートを打たれそうになったシーンでは、身体を投げ出してスライディング。苦境のなかでクローザーとしてゲームを締める役割を担った。
監督
鬼木 達 6.5
韓国から帰国後のマネジメント力は素晴らしいの一言。目標として据えた5連戦をすべて勝利に導いた手腕は高く評価されて然るべきで、この日も選手のコンディションを見極めて苦しい戦いを予想しながら、しっかり勝ち切る策を講じ、リーグ連覇へ大きな勝点をもたらした。
※MAN OF THE MATCH=取材記者が選定するこの試合の最優秀選手。
※採点は10点満点で「6」を及第点とし、「0.5」刻みで評価。
※出場時間が15分未満の選手は原則採点なし。
【チーム採点・寸評】
FC東京 5.5
組織だった守備からの素早い攻撃を展開。チームとしての持ち味をしっかり示し、長谷川監督も振り返ったように、川崎よりチャンスは作ったはず。だからこそ決め切れず、守り切れなかった点に悔いが残る。試合終了後には最後のFKのシーンを巡ってだろう、選手たちが審判団に抗議する場面も。
【FC東京|採点・寸評】
GK
13 波多野豪 5.5
ピンチは失点したシーンくらいで、声を出して最後方からチームを盛り上げた。それだけに、前半終了間際にネットを揺らされたL・ダミアンのヘッドを防ぎ切れなかったのは悔しかっただろう。
DF
22 中村拓海 5.5
左サイドまで走った33分の的確なカバーリングなどマッチアップしたマルシーニョを抑えていたが、前半終了間際に、そのマルシーニョと登里の連係によって右サイドを崩された。後半もそのマイナス分を挽回できず。永井が裏へ抜け出すパスも送ったが、ゴールにはつながらなかった。
3 森重真人 5.5
J・オマリとCBを組んで落ち着いて川崎の攻撃に対応。さすが守備リーダーという働きだった。しかし、失点シーンでは右サイドに引き出され、相手の攻撃の流れを食い止められずに失点。CKでチャンスもあったが、仕留め切れなかった。「6」に近い「5.5」というところか。
32 ジョアン・オマリ 5.5
空中戦の強さを見せ、L・ダミアンを自由にプレーさせなかった。だからこそ、難しい対応であったはずだが、クロスからの失点場面でL・ダミアンに前に入られてヘッドを決められたのが残念。
50 長友佑都 6
一列前のアダイウトンとのコンビネーションも向上した印象で、自慢の脚力を生かして鋭いオーバーラップを何度も仕掛けた。87分のD・オリヴェイラのチャンスは彼のクロスから。勝利に結びつかなかっただけに、「5.5」と悩むも「6」に。
MF
8 髙萩洋次郎 6(79分OUT)
守備に走りつつ、トップ下で持ち前のセンスを披露。前半のまた抜きパスは見事。ゴールを導き出せなかったが、パフォーマンスには好感が持てた。
21 青木拓矢 5.5(69分OUT)
57分には永井への素晴らしいワンタッチパスはあったが、試合を通じてミスも見られた。チームのリズムを上げきれず。
MF
31 安部柊斗 5.5
評価が難しいところ。足を動かして攻守に絡み、前線へボールをつなぎ、33分の渾身のブロックなども。「6」も考えたが、よりダイナミックさを加えたかったか。
27 田川亨介 5(HT IN)
サイドハーフに入り、よく守備に走った。そこは評価されるべきだろう。しかし……、29分の長友からのクロスをニアで合わせたビッグチャンスはFWとして決めたかった。1点を追う状況でもあり、前半のみで交代に。
15 アダイウトン 5.5
カウンターの先導役で、長友のオーバーラップも引き出した。ロングドリブルからDFを抜き去りゴールに迫るなど、D・オリヴェイラとともに、相手にとって怖い存在だったはず。だが、72分のクロスからのシュートなど、チャンスはあっただけにフィニッシュ精度を上げたかった。
FW
9 ディエゴ・オリヴェイラ 5.5
守備意識も高く、周囲と絡みながら攻撃に関わった。だが、エースとしてチームを救う一発を奪うことはできなかった。
交代出場
FW
11 永井謙佑 5.5(HT IN)
後半頭から登場し、自慢のスピードを生かしてゴールに迫った。73分には裏に抜け出してGKもかわしたが……、カバーに入ったジェジエウにシュートを止められた。
MF
7 三田啓貴 5.5(69分IN)
攻撃をさらに加速させるためにボランチとしてピッチへ。前に出て、試合終了間際には直接FKのチャンスを得るも、ゴールとはいかなかった。
FW
23 渡邊凌磨 -(79分IN)
疲れが見え始めた髙萩に代わってトップ下へ。ボールを追い、89分にはバックヘッドからアダイウトンへのチャンスを演出。しかし、ゲームの流れを変える仕事はできず。
監督
長谷川健太 5.5
川崎を相手によくチームの特色を示したが、勝点にはつなげられなかった。あと一押しをする策も見たかったところ。
※MAN OF THE MATCH=取材記者が選定するこの試合の最優秀選手。
※採点は10点満点で「6」を平均とし、「0.5」刻みで評価。
※出場時間が15分未満の選手は原則採点なし。
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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