少女の夢かなえたNYレッドブルズ
ニッカンサッカー 2014年10月30日 10:00配信
米MLSの東カンファレンスで5位にすべり込み、プレーオフ進出を決めたNYレッドブルズが、少女の夢をかなえた。日本人DF木村光佑(30)も所属する同クラブは23日(日本時間24日)、ニュージャージー州生まれのアイルリン・マロニーちゃん(5)と1日契約を結んだことを発表した。
クラブの公式ホームページによると、練習場に到着したアイルリンちゃんは、マイク・ペトキ監督立ち会いのもと、契約書にサイン。その後、施設やチーム練習を見学。そして待ちに待った時間が訪れた。自分の名前の入ったロッカーで、大ファンのGKロブレスと同じ31番のユニホームに袖を通し、練習に参加。ミニゲームでは、ドリブルで次々に選手たちをかわし、「初ゴール」も決めたという。
母親のシャノンさんは「もし彼女が毎日、サッカーができるのであれば、もちろんするでしょう。彼女はスパイクを履いて学校へ行きます。食料品店にも、そして医者にだってスパイクで行くのです。そのくらいサッカーが好きなんです」と説明する。
だがアイルリンちゃんには、毎日好きなだけサッカーができない理由があった。生まれつき「Familial Mediterranean Fever(家族性地中海熱)」という遺伝性疾患を患っているのだ。発熱が頻発し、胸部や腹部、関節の腫れや痛みに見舞われる上、病気が脊髄までも侵してしまっているため、運動ができなくなってしまっているという。
さらにアイルリンちゃんは自己免疫疾患も抱えており、他の病気にかかるリスクも高い。シャノンさんは「私たちは過去5年間で、40回入院し、6度手術を受けています」と話す。
そんなアイルリンちゃんのことをレッドブルズが知ったのは今月上旬。姉たちがプレーするサッカーチームが、アイルリンちゃんのために特別試合を開催したところ、選手の保護者の中にレッドブルズのシーズンチケットホルダーが含まれており、その保護者が「アイルリンちゃんのために、他にも何かできないか」とレッドブルズに連絡。とんとん拍子で1日契約の話が持ち上がったという。
プレーオフを控えた大事な時期にもかかわらず、アイルリンちゃんのための時間を設けたレッドブルズのマーク・デ・グランプレGMは「彼女は我々にとっての励みになる。選手と一緒にピッチ上ですごしてもらい、笑顔になってもらうのは、とても重要なこと」と話した。
アイルリンちゃんには厳しい未来が待っているかもしれない。それでも父のラリーさんは「彼女の病気が、家族の絆を強くすると思う」という。そして「彼女は普段は姉たちがするような活動はできないが、こうしてレッドブルズの選手たちと一緒にいられるなんて、本当に素晴らしいこと。アイルリンにとって、そして私たち、姉妹たちにとってもとても意味のある出来事」と喜んだ。
【千葉修宏】