メッシがいてもつまらないスペインリーグ
ニッカンサッカー 2015年4月16日 10:00配信
世界最高リーグの1つといわれるスペインリーグだが、すでに優勝争いはバルセロナとRマドリードの2強に絞られた。
Aマドリードが18季ぶりの優勝を飾った昨季は良かった。「バルサ対レアル」といういつもの構図が、闘将シメオネ監督率いるアトレチコによって崩された。球際での激しさなど同監督仕込みの気迫あふれるプレーで、細かいパスをつなぐ「美しいサッカー」を信条とするスペインサッカーに風穴をあけた。「勝って当然」という雰囲気を漂わせる2強に立ち向かう姿は、見ていて心地よかった。だが、そのAマドリードも今季は取りこぼしが多い。首位バルサと勝ち点9差の3位で、もはや優勝の望みは無いに等しい。
そんなスペインリーグの現状について、米CNN(電子版)が「バルサとレアルは勝ったけど、スペインサッカーにとって良いことなの?」という記事を掲載した。欧州では金満クラブとそうでないクラブの差が広がる一方。CNNはその傾向が特に顕著なスペインリーグの問題点について指摘している。
例えば、スペインでは1部の20クラブ中、収容人数3万5000人に満たない本拠地を持つクラブが12もある。バルサの本拠地カンプノウが約10万人のファンを収容するのに対し、エイバルのイプルア市民スタジアムは6479人しか集められない。エイバルが打倒バルサを目指すのは夢のある話ではあるが、そもそも両クラブが対等に競える環境にあるとは言い難い。
昨季、欧州では76のクラブがリーグ戦1試合平均2万5000人以上を集めた。その中で集客トップ50を国別に見るとドイツが13クラブで1位。イングランドが11クラブで2位となっている。スペインはバルサとレアルを含む5クラブで、落ち目と言われるイタリアの6クラブより少ない。退屈なリーグの構図が、集客数に現れてしまっている。
リーグがつまらなければ、個人成績が必要以上にクローズアップされる。現在スペインリーグ得点王ランクでトップは37ゴールのロナルド。2位がメッシで33ゴールを記録している。しかし、この素晴らしい数字ですら、「2強が飛び抜けているスペインだからでは?」という意地の悪い見方をしてみたくなる。CNNによると、スペインではレアルとバルサが1試合あたり2・9点を記録しているばかりか、上位4チームを合わせても2・38点と高い数字をマークしている。これはイングランドの1・95点、ブンデスリーガの2・04点、セリエAの1・67点と比べると異常に高い数字だ。ゴールシーンを見るのは気持ちの良いものだが、ザルのような守備を相手に得点を決めまくっても感動は薄れてくる。
もしメッシやロナルドが他国へ移籍したらどうだろう。フィジカルの強いイングランドや、堅守の代名詞カテナチオで知られるセリエAでプレーしたら。これほどまでに得点を決められるだろうか。
それではこの上位クラブと下位クラブの格差をなくすにはどうすれば良いのか。やはりルール上の制限が必要だと言わざるを得ない。
米国のスポーツのように、選手の総年俸に上限を設ける「サラリーキャップ制」を導入するのは一案だ。またリーグの収益を下位クラブにも完全に平等に分配し、貧富の差をなくす努力をするなど、何か手を打たなければ、リーグの面白みは失われていく一方だ。
そのあたりを関係者が本当に自覚していなければ、スペインリーグは近い将来、没落の一途をたどるだろう。
【千葉修宏】