イングランド協会=FAの名称は傲慢さの表れ!?
ニッカンサッカー 2015年9月17日 10:00配信
読者のみなさんはFAと聞いて何を思い出すだろうか。
どこのクラブとも契約可能なフリーエージェント選手のことを考えるかもしれない。
だがイングランドのサッカー関係者、ファンにとってFAとは「イングランド・サッカー協会」のことだ。FAはフットボール・アソシエーションの略。例えば日本協会はJFA(ジャパン・フットボール・アソシエーション)と呼ばれる。それに対し、イングランド協会はイングランドのEをつけてEFAとは呼ばれない。正式には「ザ」をつけて「The FA」という。
なぜかと言えば、イングランド協会は1863年に設立された世界最古の協会だから。当時からFAといえばイングランド協会のことで、それがそのまま現在まで続いている。
しかし世界中でサッカーが行われるようになり、各国に協会がある今、いつまでも「FA=イングランド協会」というのは、傲慢(ごうまん)な考えなのではないか、という声も聞かれるようになってきた。
今年3月からFAのCEOに就任したマーティン・グレン氏もそれを認めている。9日に報道陣に対応したグレン氏は「我々は周囲から傲慢だと認識されていると思う。私自身は必ずしもそうだとは思わないが、そう見られているのには問題がある。国際試合に行くと、他の人たちはドイツ協会、フランス協会…とあいさつするが、我々は『ハイ、僕はマーティン・グレン。FAから来ました』だから。『どこのFAだよ』ってことになる」と説明。さらに、各国との連係をより強く、スムーズにするためなら、名称変更の可能性もあると示唆した。
筆者も以前、プロ野球を担当していた時代に似たようなことを考えた。米大リーグ優勝を決める試合が「ワールドシリーズ」と呼ばれていることについてだ。
日本でも、韓国でも、ドミニカ共和国やベネズエラでも野球は盛んなのに、なぜ米国の1位を決める試合が「ワールドシリーズ」なのか?
当時、ロッテを指揮していたボビー・バレンタイン監督に聞いたところ、「最初にワールドシリーズが行われたころ、野球は米国でしか行われておらず、米国=世界だった。その呼び名が今も続いているのだろう」という答えが返ってきた。まさにイングランド協会が今でもFAと呼ばれているのと同じ理由だ。
筆者の勝手な推測だが、(それほど悪意はないとは思うが)米国=世界だと思っている人間の多い米国で「ワールドシリーズ」を「アメリカンシリーズ」に変えようという動きは、何年たっても生まれないと思う。
それに比べ「自分たちは傲慢かも」と考えるCEOがいるだけ、イングランド協会は周りが見えているのかもしれない。
【千葉修宏】