ルーマニアの英雄ハジ氏は痛がるふりは許さない
ニッカンサッカー 2015年11月12日 10:00配信
元ルーマニア代表の天才レフティー、ゲオルゲ・ハジ氏(50)が激怒した。
自らが09年に設立し、監督として指揮を執るルーマニア1部ビトルルがアストラと対戦した11月6日の試合でのこと。ビトルルMFベンザーと相手選手が交錯。腹部に蹴りを食らったような形となった同MFはピッチに倒れ込んだ。当然メディカルスタッフはサイドライン付近で倒れるベンザーのもとへ駆け寄り、治療を始めた。すると戦況を見つめていたハジ監督の表情が変わった。治療の行われている場所へ小走りで行き、なんと医療スタッフの1人を小突いて、ベンザーから引き剥がした。
驚いたもう1人のスタッフも治療の手を止めると、ハジ監督は痛そうに倒れている選手に向かって「バカ野郎、早くプレーに戻れ」とばかりに、ピッチへ向けて手を振るジェスチャー。プレー再開をうながした。サッカーではわざと倒れ込んで時間を稼ぐ選手も多いが、3度のW杯出場を誇り、代表通算124試合で35点を挙げたルーマニアの英雄ハジ監督は、そんな軟弱な選手は許さない。
本当の痛みではないと判断した瞬間に、血相を変えて選手のもとへ飛んでいった。英メトロ紙(電子版)は動画投稿サイト「ユーチューブ」の映像を掲載し、ハジ監督の潔さを称賛している。
輝かしい選手時代の成績に比べ、指導者としてのハジ監督は成功しているとは言い難い。ルーマニア代表、ガラタサライ(トルコ)、ステアウア・ブカレスト(ルーマニア)などを歴任しているが、2年間続いたことはまれ。
それでも欧州を中心にハジ監督の人気が衰えないのは、こういったおとこ気あふれる姿勢があるからなのだろう。
【千葉修宏】