プロを諦めた 2 人がスポーツビジネスの世界で成す、セレッソ大阪の「駐車場革命」とは(前編)
2018年8月31日 06:00配信
月極駐車場や個人宅において“使用されていない”駐車スペースをインターネットを通じて予約をして利用することができるサービスが akippa だ。現在、日本全国約 12,000 拠点の駐車場をオープンさせている。
同社のトップである金谷元気氏は幼少期からサッカーをしており 、Jクラブの練習参加をした経歴を持つ。そんな akippa が今年、J1 ・セレッソ大阪のブロンズスポンサーとなることが発表された。様々な取り組みを通じてユーザー/サポーターの相互流入を狙うとのことだと言う。今回は代表の金谷氏と、クラブでスポンサー営業を担当する赤堀翔平氏の2人に、今回のスポンサー契約締結の経緯やその後の狙いなどを伺った。
サポータ一の“駐車場問題”
—まずは、akippa がセレッソ大阪のスポンサーになるまではどのような流れだったのでしょうか。
金谷:去年は提携という形でやっていました。赤堀さんと初めて会った地元柏原のジュニアユースのプチOB会が去年の9月で、提携は11月から。akippa はヤンマースタジアム長居の周辺に駐車場を増やしていたのですが、もっと増やしたいという思いがあったんです。
クラブは駐車場があることはネガティブだと思っていたんですよ。車で来るよりも公共交通機関で来てほしいと。でも、実際の問題は路上駐車が多いこと。仮に予約して確実に停めてくれるのであれば、サポーターの方にとっての利便性も高まるし良いことだというので、クラブにそういう需要があるのなら、と思ったんです。
赤堀:僕らもサッカースクールを20以上展開している中で、路上駐車の問題は実際にあったんです。スクール生の保護者が子供たちを迎えに来た時に、車を路上駐車してクレームが来るということもあったので。そういうところも改善していけたら良いですよね、という話にもなりました。
金谷:実際にやってみると認知度はすごく上がっていますし、この周辺で駐車場が増えているんですよ。居住者にセレッソサポーターも多くて、その方々が「セレッソとやるなら…」と言って貸し出してくれる。どんどん駐車場は増えていって、今は長居周辺に40箇所くらいあるんじゃないですかね。
—値段はどれくらいなのでしょうか。
金谷:試合の日 で 1日1,500円くらいですかね。この周辺はコインパーキングがほとんどないんです。僕も子供の頃から親とセレッソの試合を観に来ると、この周辺で駐車にいつも困っていたというくらいでした。
—スタジアム周りの利便性をよくしたいという思いはあったのだと思います。
赤堀: 1 万人のお客さんが来るとなるとやはりパニックになってしまう。そういう点で、事前に予約して止められるという akippa の仕組みは理想的だなと思いました。お客さんの利便性を含めてストレスも少ないので。台数を増やして拡大していければ、もっと良くなると思います。
セレッソファンと akippa 会員の両方にメリットを
赤堀:もっと長居近辺に駐車場がたくさんできると良いというのが一つと、 akippa さんは会員数も多いというところで、セレッソも今はいろいろな集客のアプローチをしているので、お互いの会員にメリットがあるようにできればと思っています。7/22の浦和戦でもイベントを行いました。
—逆に、 akippa からセレッソヘの要望はありますか?
金谷:4月の横浜Fマリノス戦で行った福引き祭りは効果がありました。akippa をダウンロードしたらセレッソのグッズが必ずもらえるというキャンペーンだったのですが、やはりダウンロード数も増えましたし、会場周辺の人たちが来てくれて、「うちの駐車場も貸します」ということで、全部で30台くらい貸してくれたんですよね。サポーターが akippa を応援してくれている感じもあるので、触れ合う機会があるのは嬉しいなと思いますね。
ヤンマースタジアム長居で試合をやる際は akippa からの送客というのを何度かやっています。ジュビロ磐田との対戦時にはakippa の会員さんが300人くらい来ました。akippa は予約制なので、どこに誰が行くか、どこに誰が駐車しているかがわかるんです。ですから、大阪府のこの辺りに駐車している人向けに、メルマガなどで割引クーポンを送るんです。これがけっこう割り引かれて、2,700円くらいのチケットが1,500円くらいになります。
赤堀:その日も開幕だったので色々な優待をやっていたんですけど、akippa さんのところが最も来場者が多かったです。本当に、ダイレクトに響いて来てもらった人が一番多い優待でしたね。その時も結構工夫していただいて、うちのスポンサーをしてもらっているので選手の写真が使えるんです。そこから興味を持つようなメルマガを作ってもらって会員の方へ送ってもらえたので、そういうところも響いたのかなと思います。
金谷:僕らはサッカーが好きなので、玄人好みの編集で(笑)、山下達也選手や清原翔平選手を起用しました。
赤堀:だいたい柿谷曜一朗選手や山口蛍選手を使ってくれるところが多いんですけどね(笑)
—akippa がスポンサーになったきっかけは、※提携を機にという流れでしょうか?
※2016年11月に最初の提携、施策を発表
金谷:そうですね。提携をしたことでセレッソサポーターさんからのエンゲージメントもあるし、効果が表れ始めていたので、やるべきだなと思いました。短期的な跳ね返りではなく、スポーツなので長期的だと思っていたんですけど、短期で跳ね返ってきたので、これはすごいなと思いましたね。
—クラブとしても指定管理者制度を取ったことでいろいろとスタジアムで施策はやりやすくなったとは思います。
赤堀:できることは増えました。今年実施した犬の預かりサービスも今までではできなかったです。似たようなもので akippa さんの駐車場に停めることで託児所付きチケットを渡して、お子さんを預けて試合を観てもらえるというような話もしています。徐々に実現していけたら、と思いますね。
金谷:お子さんができたら(試合に)来られなくなる人もいますからね。
—スタジアム近辺の充実は考えていますか?
赤堀:次にできるスタジアムは複合型というので、平日でも人が来るような何かを構想してはいます。託児所はもちろんなんですけど、スーパーか何か分からないですけど、そういったものも検討しています。
文=AZrena編集部
元記事はこちら