アビスパ福岡がデータマーケティング!?プロが手掛けるファン獲得の新戦略の裏側(前編)
2018年9月7日 11:00配信
昨年12月、マーケティングプラットフォーム「b→dash」の開発・提供を行う株式会社フロムスクラッチが、サッカー・明治安田生命J2リーグに所属するアビスパ福岡と提携したことを発表した。マーケティングプラットフォーム「b→dash」を活用し、アビスパ福岡のマーケティング活動を全面的にバックアップしていく、というのが今回の提携の概要である。スポーツクラブの運営に、データマーケティングがどこまで貢献していけるのか。株式会社フロムスクラッチ執行役員、及び株式会社TechJIN代表取締役を務め、本事業を担当する、東潟拓朗氏に話を伺った。
データマーケティングをスポーツの世界へ
−今回、アビスパ福岡さんと提携することになった経緯を教えてください。
昨年2016年夏頃から、「b→dash」の開発やAIをはじめとした技術研究部門およびお客様の「b→dash」利用の支援部門を備えた株式会社TechJINを設立しました。福岡市は国家戦略特区の一つとして様々な規制緩和などにより企業が進出しやすい環境が整っているため、様々なベンチャー企業も進出してきており、良い人材・良いエンジニアも集まってくると考えました。また、代表の安部が福岡出身だったということで親和性もありました。
アビスパさんとは、TechJIN設立前後に縁のあった担当者とお会いする機会があり、そこから話が広がっていったのがきっかけです。弊社の「b→dash」を活用して、データに基づくマーケティングやチーム運営ができることをお話したところ、アビスパ福岡の経営レベルの方々まで興味を持っていただけました。アビスパさんは新しいことにどんどんチャレンジするクラブであり、我々としても、データマーケティング技術を活用して、いろいろな業界を変革したいと考えていたタイミングでしたので、是非ともということで提携に至りました。
−結構スムーズに話が進んだのですね。では実際に、アビスパ福岡というプロサッカーチームに「b→dash」が入り込むことによって生まれる、メリットはどういう部分なのでしょうか。
データサイエンスやマーケティングをスポーツチームへ持ち込む形態は種々あります。ゲームを支える表面として監督やコーチへゲーム分析等の情報提供や、選手の補強や育成に係るスカウティング育成システム提供、一方裏側のクラブの経営的な裏側として、スポンサー集めやファンの獲得・エンゲージメントの育成といったスタッフの方々が地道に行う活動の支援などがあります。
今回我々が、とっかかりとして期待されているのは、試合のためのデータ分析ではなく、もう少し基盤の部分である“運営支援”です。
スポーツでも当然経営というものがあり、あまり表に出てくることはないですが、収益の安定・拡大は至上命題です。テレビの放映料に頼らず、入場者を増やす、グッズを買ってもらう、飲食してもらうことなど安定したクラブ運営の基礎になります。その収益安定とファン獲得とは裏表の関係なのです。
なので、誰がファンなのか、何を求めているのかを把握し、積極的なコミュニケーションを行うことで、ファンを増やす・ファンのエンゲージメントを高める活動をどのクラブにも求められています。
マーケティング的な観点でスポーツ業界を見てみると、「お客さん」の属性・思考も様変わりしてきています。以前は野球に代表されるように、大きな球団で資金と順位、資金と人気の相関が高い時代がありました。でも今は、スポーツファンの方々の楽しみ方は多様化していて、家族で試合を見に行くといった楽しみ方、好きな選手を追いかける楽しみ方、居酒屋代わりに一杯飲みながら・・・など人それぞれです。もちろん純粋に試合を楽しむ!もありますよね。
ここで重要なことは、莫大な資金を投下して選手強化をしなくても、ファンの方々とのより良い関係を築けるようになっており、強さ=人気の構図では必ずしもないということです。
例えば横浜DeNAベイスターズは、たとえ順位が高くても低くてもスタジアムを満席にできるようになっています。まさに、一種の文化としてスポーツチームと地域、もしくはチームと個人がより密着している時代になったと思いませんか。
そこには、インターネットやSNSなど技術やサービスにより、情報発信が手軽になり、イベントなどを含めたオン・オフの双方向コミュニケーションが球場外でもできるようになったことも大きな要因だと考えています。
そのような背景を踏まえて、運営側に目線を移すと、多様化するファンのニーズや、多様化するコミュニケーションチャネルに対して、ファンを増やす・エンゲージメントを高めないといけない状況に身を置かれています。
多様化したファンを理解するためには、デジタルデータとして収集できるようになったファンの方々の行動履歴・購買履歴、属性、趣味趣向などの分析・理解が不可避であり、運営側にはマーケティングやシステム、データのリテラシーも当然必要になります。
逆にいうと、多様化した運営に必要なスキルや知識・リテラシーがないと、なかなかクラブ運営が効率良く進まない。そういう背景が出てきた中で、我々がクラブ運営をマーケティング面でお手伝いする意味や意義があるように思っていますね。
文=河合晴香
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