アビスパ福岡がデータマーケティング!?プロが手掛けるファン獲得の新戦略の裏側(中編)
2018年9月7日 11:10配信
「b→dash」で出来ることとは−具体的には、「b→dash」でどのようなことができるのでしょうか。
現状、2つの支援を進めています。1つはファンとのコミュニケーション支援、いわゆるマーケティング支援と、もう1つはスポンサー集めにおける企業様とのコミュニケーション支援です。
ひとつ目のマーケティング支援はまさに「b→dash」の得意技なのですが、まずは”ファン”は誰なのか?を知ることから始めています。
やっぱりサッカークラブとして、どういう方に観に来ていただいているのかという情報は必要ですよね。今ちょうど整理をしているのですが、“ファン” というのもいろいろあるじゃないですか。テレビを見て一生懸命応援してくれる方や、グッズを買ってくれる方、毎試合毎試合、球場に足を運んでくれる方。こういった人たちが、どのぐらいの割合、年代にどういう形で存在しているのかをクラブ側は把握する必要があります。今までは、それが全く分からない状態でした。
おそらく、現状では多くのスポーツチームってそういう状態だと思っています。例えばJリーグの予約システムや、独自でやっているメールの配信システムに登録していただいているメールアドレス、ECサイトでのグッズ販売の販売情報など情報が点在しています。がゆえに、”ファン”に対して断片的なイメージしかなかったり、積極的にコミュニケーションをとりたい”ファン”のターゲット層が不明確な状態ではないかと。
そこで我々はまず、アビスパさんと議論をし、簡単に言うと一般客・ファン・コアファンとセグメントを切って、それぞれのランクを決め、各セグメントの定義付けをし、試合の来場回数やECサイト、メール会員などの「統合したデータ」を用いて、お客さまを振り分けました。
”コアファン”は『年間シートを買ってくれて、高額グッズを買ってくれて、周りに情報を発信してくれる人』と定義すると、コアファンの予備軍の「誰」が明確になり、「何(メッセージ・コンテンツ)」をどのように伝えれば良いいのか、考えるべきお題が明確になります。
各セグメントのマスが定義されることで、マスごとにそもそもの母数を増やすという活動をすればいいのか、エンゲージメントを高める活動をすればいいのかなど、やりたいこと・やるべきことが考えられるようになってきます。要するにファンの人にはコアファンになってもらうし、一般の人にはファンになってもらう。どの状態にファンの方々がいるのか可視化したら、コミュニケーションによって次のステージに上がってもらうような活動をやるといったようなことです。
「b→dash」は、この分析とコミュニケーション施策の両方の機能を持ったプラットフォームです。
「b→dash」が通常お客様にサービスとして提供している至極基本的な業務の内容ではありますが、データやテクノロジーを駆使したマーケティングサポートをスポーツ業界に持ってきた、ということです。
ファンを増やしたい、経済的に稼ぎをあげたい、でも何をすればいいのか分からない、だから何もできない。その「何をすればいいのか」という部分は、まず”誰に”を可視化することが基本セオリーですので、そのはじめの一歩を絶賛邁進中です。
次のスポンサー集めも「b→dash」として提供している営業支援的な機能である「マーケティングオートメーション」を利用しています。
クラブの方々が個人個人で管理しているリストに基づいて、アビスパ福岡のスポンサーになるご案内をするところから始まります。スポンサーになりたい企業はたくさんあると思いますが、スポンサーの形態や、自分たちでもスポンサーになれるのかなど情報をこちらから情報を発信する必要があります。
アビスパさんの場合は担当の方が、属人的に活動を行っておりましたので、スポンサー候補のリストを集約し、定期的な連絡や情報のご提供などに「b→dash」のマーケティングオートメーションの機能を利用していきます。
マーケティングオートメーションという言葉になじみがないかもしれませんが、スポンサー候補の方々のリスト管理を行い、対象者のアクションや興味の度合いに応じて提供する情報を変更したり、スポンサーになる確度が高まり、お会いしに行った方が良ければアビスパの担当の方に連絡がいくようなことができます。
−実際に東潟さんがスポーツビジネスに関わってみてどう感じますか?
頭ではわかっていましたが、ロマンだけでは飯は食っていけないですね。
思った以上にビジネスセンス・マーケティングセンスも問われるし、実行に移したときにやり切るための足腰も必要だと思っています。
ITでスポーツの世界に変革を起こせる
−東潟さん自身は元々、何かスポーツはやっていらっしゃったのでしょうか。
少年野球をやっていたので、野球は昔からずっと好きです。高校からラグビーをやっていて、今も現役でちょっと試合をしたりしています。あとはOBチームと現役のバックアップみたいなこともやっていて、今はOBチームの広報をやっています。スポーツをやるのも好きだし、支えるのも結構興味あります。
−まさか、御社に入ってこういう形でスポーツに携わると思っていましたか?
思ってないです。そういう意味だと、今回はすごく良い機会だと思っていますし、やっぱり今、単純に楽しいんですよね。この気持ちってやっぱり「俺がこのチームを変えてやる」みたいな(笑)、なんとか力にならねば!っていう、いわゆる一つのファン心理的なものだと思うんですよ。
それって、アビスパの各担当の方の苦労や努力というチームの裏側を知っていて、自分もチーム作りに関わっているっていう感覚を持っているからだと思います。裏方さんの苦労に共感して応援したくなったり、『このチームのこと、こんなに深く知っているんだぜ』というちょっとした優越感を感じてもらったり、試合の作戦を理解してもらってにわか監督になってもらったり、支えている喜び、帰属してる喜び、ファンとしての喜びをみんなにも味わってもらいたい。
この感覚って、より多くの情報の発信やファンの方との接触など、「きっかけ作り」が必要だと思っているので、いろいろお手伝いさせていただきたいです。
−アビスパとの提携についてプレスリリースが昨年末に出て、半年ほど経ちました。提携の期間はどのくらいを目安にしているのでしょうか。
アビスパの方たちも開幕前後が最も忙しくて、それが過ぎれば、、、みたいなことをおっしゃっていましたが、謙遜だとわかりました(笑)。常に忙しそう。現状は、担当の方の状況に合わせてデータの収集と統合を進めている段階ですので、成果を出していくのには中長期的な取り組みになりそうです。
−今年の4月、メルカリさんが鹿島アントラーズと提携したことが話題になりました。最近、徐々にIT×スポーツでやっていこう、というような流れはいろいろなところで見られますよね。
そうですね。スポーツだけでなく、マーケティングもITによる変化がいろいろ起きてるんですよ。一昔前までは、コミュニケーションとしての広告はTVや新聞、雑誌、交通広告などオフラインが中心だったんですよね。それが、インターネットやスマホの登場により広告メディアのデジタルシフトが進み、お金の流れが変わり、情報が蓄積できるようになり、プレイヤーが変わり、など激変が起こってます。
参考記事:鹿島アントラーズ×メルカリが生む、スポーツ界のデジタルイノベーションとは?
プレイヤーで言うと、一昔前までは企業の広告部と広告代理店だったところから、現在ではシステム・データを扱うことが無視できなくなり、WEB制作会社やシステム会社、ITコンサル会社など様々なプレイヤーがマーケティングに関わるようになりました。
あとは、データ蓄積の影響がとても大きくて、今まで感覚値だった広告効果とか、マーケティング施策効果も数値としてみることができるようになっています。そうなると段々と科学的アプローチが主流になってきて、なぜうまくいったのか?に対しての原因分析と、それを再現するにはどうするべきか?みたいなところが考え方として必要となってきています。
そういう観点で、ITとスポーツも同じだと思っていて、スポーツもアーティスティックで感覚の世界から、強いチームの要素分析みたいなところが進んできたと思ってますが、さらにデータ活用やテクノロジーとの融合で、全く新しい考え方やアプローチが生まれるんじゃないかと。
そういう意味で異業種・異文化の人たちが、スポーツにそれぞれの強みを持ち込むことってとても意義があることだと思います。特にテクノロジーを知っている人がスポーツに関わっていく流れが増えているのは喜ばしいなと思いますね。
文=河合晴香
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